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社史のつくり方

社史は外注か社内か:判断の基準と頼み方

社史は、社内で作る、一部を頼む、まとめて頼むの3つの形で作れます。形の選び方、工程ごとの分担、依頼先の種類と選ぶときに確かめること、社内担当者の時間の見込み方をまとめました。

外注か社内かを決める基準

社史の作り方は、すべてを社内で作る、一部の工程を社外に頼む、企画から印刷までをまとめて社外に頼む、の3つの形に分けられます。どの形を選んでも、目的と読者を決めること、資料を出すこと、取材に応じる人の日程を整えること、年や名前などの事実を確かめることは、会社の仕事として残ります。

どの形が合うかは、次の5つで判断します。

  • 社内の担当者の時間:通常の業務と並行して、資料集め、日程の調整、原稿の確認にどれだけ時間を割けるか
  • 書ける人、作れる人の有無:取材、執筆、デザイン、組版の経験がある人が社内にいるか
  • 社史の厚み:写真と年表が中心の薄い冊子か、取材にもとづく文章を読ませる本格的な社史か
  • 期限:周年の式典など、配る日が決まっているか
  • 確認の体制:原稿を確かめる人と、最終的に判断する人を社内で決められるか

社外に頼む範囲を広げるほど、社内の手間は減り、費用は増えます。費用の目安と内訳は社史の費用で、工程の全体像は社史の作り方:流れと期間の目安で紹介しています。

3つの形の比較

3つの形の違いは、社外に任せる工程の範囲です。社内で担う工程が多いほど、内容を細かく自社で決められる一方、担当者の時間がかかります。

形社外が担う工程社内の手間向いている会社
社内で作る印刷・製本のみ(PDFやウェブで公開する場合は、社外に頼まないこともある)大きい。企画、資料集め、取材、執筆、デザイン、校正をすべて社内で行う文章や編集の経験者が社内にいる会社。期限に余裕があり、写真年表のような薄い社史から始めたい会社
一部を頼む取材と執筆、デザインと組版、校正など、社内で手が回らない工程中くらい。企画、資料集め、確認は社内で行い、頼んだ工程の進み具合を管理する担当者は置けるものの、取材や執筆の経験者がいない会社。費用を抑えつつ、仕上がりの質を保ちたい会社
まとめて頼む企画の整理から取材、執筆、デザイン、校正、印刷・製本まで小さい。目的と方針の決定、資料の提供、日程の調整、原稿の確認が中心担当者の時間が限られる会社。ページ数が多い本格的な社史を、期限までに仕上げたい会社

どの形でも、内容の正しさに責任を持つのは会社です。まとめて頼む場合も、固有名詞、年、数字の確認は、社内で行う必要があります。

形は、途中で変えることもできます

年表と資料集めを社内で進めてから、取材と執筆だけを社外に頼む進め方もあります。社内で作った年表の下書きがあると、依頼先との打ち合わせが短くなり、取材の質問も具体的になります。年表の作り方は、社史の年表の作り方で紹介しています。

工程ごとに、社内でできること・社外に頼みやすいこと

社史づくりの工程は、会社にしかできない工程と、専門の技術が要る工程に分かれます。会社の内側の情報を扱う工程は社内に向き、文章、デザイン、印刷の技術が要る工程は社外に頼みやすい工程です。

工程社内でできること社外に頼みやすいこと
企画目的、読者、予算、発行日を決める。社内の了承を得る構成の型やページ数の提案、似た規模の社史の進め方の説明
資料集め写真、登記、決算書、社内報などを探して集める。社内とOB・OGへの呼びかけ集めた資料の整理、写真の読み込み(スキャン)、年表の下書きの清書
取材話を聞く人を選び、日程を整える。社内の人どうしで話を聞く質問の設計、聞き取り、録音の文字起こし
構成(台割)載せたい内容と、載せない内容を決めるどのページに何を載せるかの一覧づくり
執筆挨拶文、社員の寄稿、事実関係のメモ取材と資料をもとにした本文の執筆、文章の調整
確認・校正固有名詞、年、数字、載せてよい範囲の確認誤字や表記ゆれの校正、校正の進め方の管理
デザイン・組版デザインの方向を決める。社内の撮影誌面のデザイン、写真の補正、組版
印刷・製本部数、配り方、仕様を決める印刷、製本、納品
配布・活用名簿づくり、発送、社内での使い方を決めるPDFやウェブ用のデータづくり、発送の代行

社内に残すことをおすすめするのは、目的の決定、話を聞く人の選定、事実の確認の3つです。どれも会社の内側を知っている人でなければ判断できず、社外に任せると、確認の往復が増えることがあります。

反対に、取材と執筆は、社外に頼む効果が大きい工程です。社内の人が聞き手になると、話し手が遠慮したり、社内では当たり前の前提が説明されなかったりすることがあります。社外の聞き手は、知らない立場から「なぜ」を聞けるため、読む人に伝わる話を引き出しやすくなります。

依頼先の種類と、それぞれの得意なこと

社史の依頼先は、主に編集制作会社、出版社、印刷会社、フリーランスのライター・編集者の4つです。同じ種類でも、社史を多く手がけているか、どの工程を自社で持っているかによって、頼める範囲が変わります。ここでは一般的な傾向をまとめます。

依頼先主に担える工程向いている場面確かめておきたいこと
編集制作会社企画、取材、執筆、編集、デザイン。印刷は提携先に手配することが多い取材と文章の質を重視したいとき。企画から任せたいとき印刷を含めた全体の窓口になるか。取材と執筆を担う人が誰か
出版社編集、校正、印刷の手配。書店での流通や、ISBNを付けた出版を扱うところもある社史を書店で販売したい、広く読まれる本にしたいとき社史として作るか、出版物として作るか。流通の有無と、その条件
印刷会社印刷、製本。社史の編集やデザインの部門を持つところもある部数が多いとき。仕様(上製本、箱など)にこだわりたいとき編集と取材を自社で行うか、外部に頼むか
フリーランスのライター・編集者取材、執筆、編集、校正など、本人の専門の工程一部の工程だけを頼みたいとき。社内で進行を管理できるとき本人が担えない工程(デザイン、印刷)を誰が手配するか。担当者の事情で作業が止まったときの対応

出版の方法の違い(企業出版、自費出版、商業出版、社史)と、ISBNや納本の基本は、企業出版・自費出版・商業出版・社史の違いと費用で説明しています。

個人に仕事を頼むときの決まり

フリーランスのライターや編集者など、従業員を使わない個人に仕事を頼む場合は、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス・事業者間取引適正化等法)の対象になります。公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省の説明資料によると、この法律は令和6年11月1日に施行され、業務を委託した事業者は、給付の内容、報酬の額、支払期日などの取引条件を、書面または電子メールなどの方法で直ちに示す必要があります。発注する側に従業員がいない場合も、この明示の決まりは適用されます。個別の取引が対象になるかは、専門家や公的な相談窓口にご確認ください。

依頼先を選ぶときに確かめること

依頼先を選ぶときは、見積もりの金額だけでなく、取材の進め方、修正の回数、権利とデータの引き渡し、確認の体制の4つを確かめます。この4つは、後から変えにくく、食い違うと追加の費用や日数につながりやすい項目です。見積書の読み方は、社史の費用で紹介しています。

1. 取材の進め方

確かめること
誰が取材し、誰が書くか。取材の回数と1回の時間、対面かオンラインか、録音と文字起こしの扱い。
理由
取材した人と書く人が違う場合、話の細かな印象が原稿に残りにくいことがあります。取材の回数が見積もりの範囲を超えたときの扱いも、あらかじめ確かめます。

2. 修正の回数

確かめること
原稿の段階と、組版後のゲラ(初校、再校)の段階で、それぞれ何回まで直せるか。回数を超えた場合と、大きな構成の変更をした場合の扱い。
理由
社史は確認する人が多く、直しが増えやすい本です。どの段階でどの程度の直しができるかを決めておくと、社内の確認の段取りも立てやすくなります。

3. 権利とデータの引き渡し

確かめること
原稿、写真、デザインの著作権が誰のものになるか。納品後に増刷、PDF化、ウェブへの掲載、改訂版づくりができるか。組版データ、写真の元データ、取材の録音と文字起こしを受け取れるか。
理由
文化庁の『著作権テキスト』によると、制作を頼んだ場合、料金の支払いの有無にかかわらず、実際に創作した受注者側が著作者となり、発注者が納品後に利用するには、あらかじめ契約を交わしておく必要があります。また、文化庁の『誰でもできる著作権契約マニュアル』では、著作権のすべてを譲渡する場合でも、二次的著作物に関する権利(著作権法第27条・第28条)を明記しないと、譲渡の対象ではないと推定されること(同法第61条第2項)が説明されています。改訂版や要約版を作る予定があれば、契約の書き方を専門家に確かめることをおすすめします。

4. 確認の体制

確かめること
依頼先の窓口は誰か。会社側の確認者が何人いても対応できるか。確認の期限と、連絡の方法。
理由
確認の遅れは、社史づくりで日程が延びる主な原因の1つです。会社側も、確認する人と最終的に判断する人を1人に決め、依頼先に伝えておくと、進めやすくなります。

依頼する前に、社内でそろえておくもの

  • 社史の目的と、主に読んでほしい人
  • 配る日と、配る場面
  • 社内の担当者と、最終的に判断する人
  • 話を聞きたい人の一覧
  • 手元にある資料の一覧と、年表の下書き
  • 紙の本にするか、PDFやウェブで公開するか

これらがそろっていると、複数の依頼先に同じ条件で見積もりを頼めるため、比べやすくなります。社員や取引先の名前、写真を載せる予定がある場合は、本人の了承の取り方も依頼先と相談しておきます。個人情報や肖像の扱いの判断は、弁護士などの専門家にご確認ください。

社内担当者の時間の見込み方

社内担当者に必要な時間は、社外に頼む範囲、ページ数、話を聞く人数、確認する人の数で大きく変わります。社史の担当者の作業時間を調べた公的な統計は見当たらないため、自社の条件で積み上げて見込むのが確実です。

見込むときは、担当者の仕事を「回数が決まっている仕事」と「量で決まる仕事」に分けて考えます。

  • 依頼先との打ち合わせ:回数 × 1回の時間(準備と議事メモを含む)(時間を決めるもの:打ち合わせの回数)
  • 資料集め:探す場所の数ごとに、探す時間と整理する時間を見込む(時間を決めるもの:資料の量と、保管場所の数)
  • 取材の日程調整と立ち会い:人数 × 回数 ×(調整の時間 + 立ち会う時間)(時間を決めるもの:話を聞く人数と回数)
  • 原稿とゲラの確認:ページ数 × 確認の回数 × 1ページあたりの時間。社内の確認者への回覧と取りまとめも加える(時間を決めるもの:ページ数と、確認の回数)
  • 社内への説明と了承:経営会議などに諮る回数 × 準備の時間(時間を決めるもの:会議の回数)
  • 配布の準備:名簿づくりと発送の準備の時間(時間を決めるもの:配る先の数)

担当者の時間は、全期間に均等にかかるのではなく、資料集めの時期と、原稿・ゲラの確認の時期に集中します。この2つの時期は、通常の業務を減らすなどの調整を、あらかじめ上司と決めておくと進めやすくなります。

例:社外にまとめて頼む場合でも、資料集めと原稿の確認は社内に残ります。確認の時期に担当者が他の繁忙期と重なると、全体の日程が延びることがあります。

無料資料のご案内

社外に頼む範囲を決めるときや、社内で計画を説明するときに使える資料を、無料で公開しています。

社内での共有や印刷にお使いいただけます。

よくある質問

社史は、外注と社内のどちらで作るのがよいですか
社内の担当者の時間、書ける人の有無、社史の厚み、期限、確認の体制の5つで判断します。担当者の時間が限られ、本格的な社史を期限までに仕上げたい場合はまとめて頼む形、担当者は置けるものの取材や執筆の経験者がいない場合は一部を頼む形が向いています。
社史を外注しても、社内でやることはありますか
あります。目的と読者の決定、資料の提供、取材に応じる人の日程調整、固有名詞・年・数字の確認、配る先の名簿づくりは、社外にまとめて頼む場合でも会社の仕事として残ります。
社史の一部だけを外注することはできますか
できます。社外に頼む効果が大きいのは、取材と執筆、デザインと組版、校正です。企画、資料集め、事実の確認は社内に残すと、確認の往復を減らせます。
社史の依頼先には、どのような種類がありますか
主に、編集制作会社、出版社、印刷会社、フリーランスのライター・編集者の4つです。取材と文章を重視するか、書店での流通を考えるか、部数や仕様を重視するか、一部の工程だけを頼むかによって、合う依頼先が変わります。
依頼先を選ぶときは、何を確かめればよいですか
取材の進め方、修正の回数、権利とデータの引き渡し、確認の体制の4つです。特に、原稿や写真の著作権の扱いと、組版データや取材の録音を受け取れるかは、増刷や改訂版づくりに関わるため、契約の前に確かめます。
外注した社史の著作権は、誰のものになりますか
文化庁の『著作権テキスト』によると、制作を頼んだ場合、実際に創作した受注者側が著作者になり、発注者が納品後に利用するには、あらかじめ契約を交わしておく必要があります。具体的な契約の内容は、弁護士などの専門家にご確認ください。
社内の担当者には、どのくらいの時間がかかりますか
社外に頼む範囲、ページ数、話を聞く人数、確認する人の数で変わります。打ち合わせ、取材の調整、原稿の確認などを回数と量で積み上げて見込みます。時間は、資料集めの時期と、原稿・ゲラの確認の時期に集中します。

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公開日:2026年10月15日 KATARU(運営 ミダスマーケティング)