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社史のつくり方

社史の年表の作り方:項目・集め方・書式

社史の年表は、取材や本文の前に作る「事実の土台」です。列の作り方、集める資料、和暦や創業・設立の年の確かめ方、書き方の決まり、取材につなげる方法を、書式の例とともにまとめました。

社史の年表の役割

社史の年表は、会社の出来事を年月の順に一覧にしたものです。資料編に置いて本文の内容を探しやすくするだけでなく、社史づくりの最初に作る「事実の土台」になります。年表の下書きがあると、構成の区切り、取材の質問、本文の事実の確かめが、すべて同じ土台の上で進められます。

社史づくりの中で、年表は次の4つの役割を持ちます。

  • 事実の土台:年、出来事、人の名前を、出典とともに1か所にまとめます。本文や挨拶文で年が食い違うのを防ぎます。
  • 構成の骨組み:出来事の並びから、会社の歩みをいくつの時代に区切るかが見えてきます。
  • 取材の質問のもと:出来事と出来事のあいだの空白や、大きな変化の年が、取材で聞くべき点になります。
  • 資料編の一覧:完成した社史の巻末に置き、読む人が出来事を探せるようにします。

年表と、その時代の課題や判断を文章でつづる通史の違いは、社史に何を書くかで説明しています。年表に用語集などを加えた記録は、社内のAIに自社のことを教える台帳にもなります(社内のAIに、自社のことを教える方法)。

年表の列の作り方

社史の年表は、年・月、会社の出来事、業界・社会の出来事、人物、出典の5種類の列で作るのが基本です。完成した社史に載せるのは年と出来事の列が中心ですが、作る途中では人物と出典の列も入れておくと、確認と取材に使えます。

列書くこと気をつけること
年・月西暦と和暦。分かれば月(日)月が分からない出来事は年だけにし、推定の場合は「ごろ」と書き分けます。並べ替えのため、西暦の列を独立させます
会社の出来事設立、社名の変更、拠点の開設・移転、新しい事業や製品、組織の変更、受賞、周年の行事など1行に1つの出来事を書きます。同じ年に複数あれば行を分けます
業界・社会の出来事法律や制度の変更、業界の大きな変化、景気の動き、改元など会社の出来事と関係のあるものを選びます。多く入れすぎると、会社の出来事が目立たなくなります
人物その出来事に関わった人の役職(作る途中では名前も)完成版にどこまで名前を載せるかは、本人の了承を得てから決めます
出典その年と出来事を確かめた資料(登記、決算書、社内報の号数、写真の裏書き、聞き取りなど)完成版には載せなくても、作業用の年表には残します。後から問い合わせがあったときの手がかりになります

社内で使う作業用の年表には、「確かめ済みか」「取材で聞くこと」の列を足すと便利です。確かめが終わった行と、まだ記憶だけに頼っている行を見分けられます。

年表のために集める資料

年表の行は、会社に残る資料から埋めていきます。資料によって分かることが異なるため、1つの出来事を2つ以上の資料で確かめられると確実です。

資料分かること入手のしかたと注意
登記簿(登記事項証明書)会社成立の年月日、商号や本店の変更、役員の就任と退任、目的(事業内容)の変更法務局で請求します。古い変更は、閉鎖された登記記録に残っていることがあります(下の囲みを参照)
定款設立時の目的、事業年度(決算期)会社で保管しているものを確かめます。変更の経緯は議事録と合わせて見ます
決算書・税務申告の控え期ごとの売上、社員数、拠点、事業の規模何期がいつからいつまでかを、表紙の期間で確かめます
株主総会・取締役会の議事録大きな決定の日付と内容決めた日と実行した日が違うことがあります。年表にはどちらの日かを書き分けます
社内報・会社案内・カタログ行事、新製品、拠点、社員の様子発行年月と号数を出典に残します
写真建物、製品、行事、人裏の書き込みや、写っている看板・車・服装から年を推し量ります。推定の年は「ごろ」と書きます
新聞記事・業界紙・表彰状外から見た出来事と、その日付記事の日付と、出来事があった日を区別します
聞き取り資料に残らない出来事と、その理由記憶の年はずれることがあります。資料で確かめるまでは「聞き取りによる」と出典に書きます

登記事項証明書の取り方

会社の登記事項証明書は、どなたでも請求でき、他の地域の法務局が管轄する会社の分も、最寄りの法務局で取得できます(法務局「よくあるご質問等<商業・法人登記関係>」)。請求は、窓口、郵送、オンラインの方法があります(法務局「登記事項証明書等の請求にはオンラインでの手続が便利です」)。

法務省「商業・法人登記Q&A」によると、履歴事項証明書には、現在の事項に加えて、請求の日の3年前の日が属する年の1月1日以降に抹消された事項などが記載されます。それより前の変更は、閉鎖した登記記録の事項を記した閉鎖事項証明書や、登記所のコンピュータ化の前の閉鎖登記簿の謄本で確かめられる場合があります。どの証明書にどの時期の記録が残っているかは、管轄の法務局にご確認ください。手数料は法務省「登記手数料について」に掲載されています。

資料集めの段取りと、何を探すかの一覧は、社史の資料集めでも紹介しています。

年の確かめ方

社史の年表で誤りが起きやすいのは、和暦と西暦の換算、決算期と暦年のずれ、創業と設立の取り違えの3つです。どの基準で書くかを最初に決め、凡例として年表の冒頭に書いておきます。

和暦と西暦

改元の年は、1年の中に2つの元号があります。国立国会図書館のレファレンス協同データベースに収められた事例によると、昭和は1989年1月7日(昭和64年)までで、平成は同年1月8日から、令和は2019年5月1日から始まり、平成31年の最後の日は4月30日です(平成元年の始まり、令和元年の始まり)。改元の年の出来事は、月日まで確かめてから和暦を付けます。

例:1989年1月5日の出来事は昭和64年、同じ年の4月の出来事は平成元年と書きます。

決算期と暦年

会社の記録は、事業年度(決算期)を単位にしているものが多くあります。決算期が暦年と違う会社では、「第10期」が2つの暦年にまたがります。決算書から年表に移すときは、「第10期(2015年4月〜2016年3月)」のように期間を添えるか、年表全体を暦年と事業年度のどちらで書くかを決めて、凡例に書きます。

創業と設立

創業は、事業を始めた時点を指し、会社によって、個人で商売を始めた年、店を開いた年などを起点にしています。設立は、会社という法人ができた時点です。会社法第49条は、株式会社は本店の所在地で設立の登記をすることによって成立すると定めています(法務省の参考資料に掲載の条文)。登記事項証明書の「会社成立の年月日」が、設立の日を確かめる資料になります。

周年をどちらから数えるかは会社が決めることです。年表には創業と設立の両方を載せ、「創業○年」「設立○年」のどちらで周年を数えているかを書き添えると、読む人が迷いません。

記憶と資料が食い違うとき

聞き取りで聞いた年と資料の年が違う場合は、まず登記、決算書、議事録などの資料を優先します。資料がない場合は、話した人に「その前後に何があったか」を聞き、他の出来事との前後関係から年を絞り込みます。決めきれないときは「ごろ」を付け、出典の列に根拠を残します。

書き方の決まり

年表は行の数が多く、複数の人で書き進めることもあるため、書き始める前に表記の決まりを作っておきます。決まりは1枚にまとめ、校正のときにも使います。

主語
会社の出来事の列は、主語を省いて「本社を○○市に移転」のように書くか、「当社」「社名」のどちらで書くかを1つに決めます。子会社やグループ会社の出来事は、主語を省かずに書きます。
文末
「○○を開設」「○○を発売」のように、名詞や動作で終える形にそろえます。「〜した」「〜します」を混ぜないようにします。
社名と表記ゆれ
社名や商品名が変わった場合は、その当時の名前で書き、初出に現在の名前を括弧で添えます。「株式会社」と「(株)」、旧字体と新字体、拠点名の書き方など、ゆれやすい表記は一覧にしておきます。
数字
横組みの年表では算用数字を使い、桁区切りや単位(人、店、拠点)をそろえます。売上や社員数には「○年○月時点」「第○期」のように時点を添え、出典の列に資料名を書きます。
人の書き方
役職名は、その時点の肩書きで書きます。名前を載せる場合は、本人や家族に漢字を確かめます。

ウェブで公開するときの配慮

年表をPDFやウェブで公開する場合、社員やOB・OGの名前、個人の経歴は、紙の本よりも多くの人の目にふれ、検索で見つかることもあります。公開する年表では、名前を役職名に置き換える、本人の了承を得た人だけを載せる、といった配慮をおすすめします。個人情報の扱いの判断は、弁護士などの専門家にご確認ください。

年表から本文と取材につなげる

年表の下書きができたら、それを見ながら、社史の構成と取材の質問を考えます。年表の中で注目するのは、変化の大きい年、空白の期間、理由が書かれていない出来事の3つです。

  • 変化の大きい年:時代の区切りにして、章を分けます。質問の例「この年の前と後で、会社の何が変わりましたか」
  • 空白の期間:資料が残っていない理由を確かめ、取材で埋めます。質問の例「この数年間、社内では何に力を入れていましたか」
  • 理由が書かれていない出来事:判断の場面として、本文の山場にします。質問の例「なぜ、この時期に移転(新事業、社名の変更)を決めたのですか」
  • 社会の出来事と重なる年:会社がどう受け止め、どう動いたかを書きます。質問の例「この出来事は、仕事にどのような影響がありましたか」
  • 人の入れ替わり:代替わりや組織の変化として書きます。質問の例「役割を引き継いだとき、何を受け継ぎ、何を変えましたか」

年表で区切った時代を章にする方法は社史の5つの型の通史型で、取材の段取りと質問の作り方は社史の取材の進め方と質問例で紹介しています。取材で聞いた話は、年表に戻して行を足し、出典の列に「聞き取り」と書いておきます。

年表の書式の例

作業用の年表の書式の例を示します。会社の出来事は、説明のために作った架空のものです。改元の行は、前の節で確かめた日付にもとづいています。

西暦和暦月会社の出来事業界・社会の出来事人物出典
1978昭和534(例)創業者が個人で部品の加工を始める(創業)創業者聞き取り、当時の写真
1985昭和6010(例)株式会社として設立初代社長登記事項証明書(会社成立の年月日)
1989昭和64/平成元11月8日、元号が平成に改まる国立国会図書館 レファレンス協同データベース
1992平成4—(例)第二工場を建てる工場長写真の裏書き(年のみ、年はごろ)。要確認
2008平成204(例)社名を変更2代目社長登記事項証明書、議事録
2019平成31/令和元55月1日、元号が令和に改まる国立国会図書館 レファレンス協同データベース

完成した社史に載せる年表では、人物と出典の列を外し、西暦・和暦・会社の出来事・社会の出来事の4列程度にまとめるのが一般的です。和暦を併記するかどうかは、読む人の世代や、社内でどちらが使われてきたかに合わせて決めます。

例:表計算ソフトで作る場合は、西暦の列を数値にしておくと並べ替えができます。「ごろ」などの注記は、別の列に分けておくと並べ替えの妨げになりません。

無料資料のご案内

年表づくりに、そのまま使える書式を無料で公開しています。

社内での共有や印刷にお使いいただけます。

よくある質問

社史の年表には、どのような列を作ればよいですか
年・月、会社の出来事、業界・社会の出来事、人物、出典の5種類が基本です。作業用の年表には、確かめ済みかどうかと、取材で聞くことの列を足すと便利です。完成版では、西暦・和暦・会社の出来事・社会の出来事の4列程度にまとめるのが一般的です。
年表を作るには、どのような資料を集めればよいですか
登記事項証明書、定款、決算書、株主総会や取締役会の議事録、社内報や会社案内、写真、新聞記事や表彰状、聞き取りの記録です。1つの出来事を2つ以上の資料で確かめられると確実です。
会社の古い登記は、どこで確かめられますか
法務局で登記事項証明書を請求します。法務省の「商業・法人登記Q&A」によると、履歴事項証明書には、請求の日の3年前の日が属する年の1月1日以降に抹消された事項などが載ります。それより前の変更は、閉鎖事項証明書や閉鎖登記簿の謄本で確かめられる場合があるため、管轄の法務局にご確認ください。
創業と設立は、どう違いますか
創業は事業を始めた時点、設立は会社という法人ができた時点です。株式会社は、本店の所在地で設立の登記をすることで成立します(会社法第49条)。年表には両方を載せ、周年をどちらから数えるかを書き添えます。
年表は、西暦と和暦のどちらで書けばよいですか
並べ替えや計算には西暦が便利なため、作業用の年表では西暦の列を独立させます。完成版で和暦を併記するかは、読む人や社内の慣習に合わせて決めます。改元の年は、月日まで確かめてから和暦を付けます。
年がはっきりしない出来事は、どう書けばよいですか
前後の出来事や写真の手がかりから年を絞り込み、決めきれないときは「ごろ」を付けて書きます。出典の列に根拠を残し、取材で確かめる項目として印を付けておきます。
年表は、いつ作ればよいですか
取材の前に、下書きを作ります。分かる年と出来事だけで構いません。下書きの空白や変化の大きい年が、取材の質問のもとになり、取材で聞いた話を年表に戻して完成させていきます。

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公開日:2026年10月15日 KATARU(運営 ミダスマーケティング)