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社史のつくり方

社史の資料集め:何を集め、どこを探すか

社史の資料は、取材で聞いた話の年や数字を確かめる裏付けになります。何を集め、どこを探し、どう整理するか。写真の扱いとデジタル化、資料がない場合の進め方まで解説します。

集める資料の一覧

社史の資料集めとは、登記簿、定款、決算書、社内報、写真、議事録、製品カタログ、新聞・雑誌の記事、取引先との記録、表彰状などを集め、会社の歩みの年と事実を確かめられる状態にすることです。資料は、取材で聞いた話の年や数字を確かめる裏付けになり、取材で何を聞くかを決める手がかりにもなります。資料集めは、取材の前に始めると進めやすくなります。

資料分かること主な置き場所
登記簿(登記事項証明書)設立の年月日、商号・本店の移り変わり、役員の就任と退任、資本金の変化法務局、社内の総務の書類
定款会社をつくったときの目的、事業の範囲と、その変更社内の総務の書類、設立に関わった専門家
決算書・売上の推移規模の変化、節目の年。話の年や数字の確かめ経理の書類、顧問の税理士
社内報・年賀状・挨拶文その年に経営者が何を語り、社内で何が起きていたか総務・広報の棚、OB・OGの手元
写真店や工場、社員、行事の様子。時代の空気と、そこにいた人社内の倉庫、OB・OG・家族のアルバム
議事録(取締役会・株主総会など)何を、いつ決めたか。大きな判断の日付総務の書類、役員室
製品カタログ・会社案内・チラシその時代に、何を、どんな言葉で売っていたか営業・企画の棚、取引先
新聞・雑誌の記事外から見た会社の評価、業界や地域の動き社内の切り抜き、図書館
取引先との記録主な取引の始まり、長く続く関係の経緯営業の書類、取引先の手元
表彰状・認定証受けた評価と、その年応接室や社長室の壁、倉庫
組織図・社員名簿・役員の記録部署や拠点ができた年、人の移り変わり人事・総務の書類
手帳・日記・手紙当時の考えや、判断の前後の迷い創業者や家族の手元

すべてを集める必要はありません。最初は、設立の年月日が分かる登記簿か定款、規模の変化が分かる決算書、時代の様子が分かる写真の3つを核にします。社史のどの要素にどの資料を使うかは、社史に何を書くかでも整理しています。手帳や日記などの個人の記録は、本人や家族の許しを得てから読みます。

資料を探す場所

資料は、社内の倉庫、OB・OGや創業者の家族、取引先、図書館、国立国会図書館のデジタルコレクション、法務局の6つを順に当たると、見落としが少なくなります。社内から始め、外へ広げていく順番です。

社内の倉庫・書庫
総務、経理、営業、広報の棚、役員室、倉庫の段ボールを見て回ります。「古い書類を捨てずに置いてある場所」を、長く勤めている社員に聞くのが近道です。
OB・OG・創業者の家族
退職した社員や創業者の家族の手元には、社内に残っていない写真、手紙、記念品が残っていることがあります。社内報やOB・OG会の連絡で、資料を探していることを知らせます。借りた資料は、返す日を決めて記録します。
取引先
長く付き合いのある取引先には、昔のカタログや、取引の始まりのころの書類が残っていることがあります。お願いするときは、何のために使うかと、返す時期を伝えます。
図書館
地元の公共図書館には、地方紙や業界紙、地域の歴史をまとめた本がそろっていることがあります。会社が載った記事は、新聞の縮刷版や、図書館で使える記事のデータベースで探せる場合があります。探し方は、図書館の職員に相談できます。
国立国会図書館のデジタルコレクション
国立国会図書館デジタルコレクションでは、国立国会図書館がデジタル化した資料を検索できます。インターネットで公開されている資料のほか、絶版などで手に入りにくい資料は、カレントアウェアネス・ポータルの記事によると、2022年5月19日に始まった「個人向けデジタル化資料送信サービス」で、日本国内に住む登録利用者が閲覧できるようになりました。業界誌に載った自社の記事や、同じ業界の歩みを調べるときに役立ちます。
法務局
登記の記録は、法務局で登記事項証明書として取得できます。法務局の登記事項証明書等の交付申請書には、現在の記録のほかに、閉鎖事項証明書や、コンピュータ化以前の閉鎖登記簿の謄抄本を請求する欄があります。設立のころの役員や本店の場所をさかのぼって確かめるときに使えます。古い記録がどこまで残っているか、どの法務局で取れるかは、事前に法務局にお問い合わせください。

資料の整理のしかた

集めた資料は、「資料台帳」に1点ずつ番号を付けて記録します。台帳があると、原稿の中の年や数字が、どの資料に基づくかをあとからたどれます。台帳は表計算ソフトで作れば足ります。

項目書くこと例
番号資料ごとの通し番号。原本と写しの両方に同じ番号を付けるS-0012
年資料が作られた年(分からなければ「〇年ごろ」)1978年ごろ
種類写真、社内報、議事録、記事など写真
内容何が書かれ、何が写っているかを一文で第2工場の完成を祝う社員の集合写真
出典どこで見つけたか、誰から借りたかOB・OGの方のアルバムから借用
保管場所原本と写しの置き場所原本は返却済み。写しは共有フォルダ
公開区分社外に出してよい、社内だけ、使わない写っている人の確認待ち
使ったページ社史のどこで使ったか第2章、年表

番号は、見つけた順に付けて構いません。並べ替えは、年や種類の列で行えば足ります。資料に書かれた年と、取材で聞いた年が食い違う場合は、両方を台帳に書き、どちらを採るかを決めた理由も残します。台帳の年は、年表の作り方で解説している年表の下書きにもなります。

写真の扱い

写真は、社史の中でも読み手の目を引きやすい資料です。一方で、撮影した人、写っている人、使ってよい範囲という3つの点を確かめる必要があります。

  • 裏も記録する:昔の写真は、裏に日付、場所、写っている人の名前が書かれていることがあります。表と裏の両方を撮るかスキャンし、台帳に書き写します。
  • 写っている人を確かめる:OB・OGや古くからいる社員に写真を見てもらい、写っている人と、いつの何の場面かを聞きます。写真を見せながら話を聞くと、記憶がよみがえりやすくなります。
  • 撮影した人を確かめる:社員が撮ったものか、写真館や外部のカメラマンに頼んだものかを確かめます。外部に頼んだ写真を社史に使ってよい取り決めになっているかも確認します。
  • 載せてよいかを確かめる:写っている人が特定できる写真を社外向けの版に載せる場合は、本人や家族の確認を取ります。確認が取れない場合は、社内向けの版に限るなどの方法を選びます。

写真の著作権や肖像の扱いは、撮影の経緯や使い方によって判断が変わります。判断に迷う場合は、弁護士などの専門家にご確認ください。本づくりで必要になる権利の基本は、企業出版・自費出版・商業出版・社史の違いと費用でもふれています。

デジタル化の進め方

紙の資料と写真は、スキャンしてデータにしておくと、原本を傷めずに何度でも見返せ、社内で共有でき、原本を持ち主に早く返せます。デジタル化したデータは、社内のAIに会社のことを教えるときの素材にもなります(社内のAIに、自社のことを教える方法)。

解像度の目安

文字の資料の解像度について、国立国会図書館の研修教材「資料デジタル化の基礎」は、「国立国会図書館資料デジタル化の手引」をもとに、白黒の文字・線画の場合の目安を次のように示しています。

資料の文字の大きさ・内容解像度の目安
10ポイント以上の文字150dpi
8ポイント以上の文字200dpi
6ポイント以上の文字と線画300dpi
4ポイント以上の文字、主に線画400dpi

同じ教材では、近年の国立国会図書館では400dpiが基本であること、多くの機関で300〜400dpiほどが使われていることにもふれています。写真について、この教材は具体的な数値を示していません。一般には、写真は社史に載せる大きさより大きく使う可能性を考え、文字の資料よりも高めの解像度で、カラーで読み取っておくと、あとで使い道を広げやすくなります。解像度を上げるほどデータの容量も大きくなるため、資料の数と保存先の容量のつり合いを見て決めます。

デジタル化で気をつけること

  • ファイル名に台帳の番号を入れ、台帳とデータを結び付けます(例:S-0012_表.jpg、S-0012_裏.jpg)。
  • 原本は、スキャンしたあとも捨てずに保管するか、持ち主に返します。
  • 傷みやすい資料や、はがすと破れる写真は、無理にアルバムから外さず、そのまま撮影します。
  • データは、社内の共有フォルダと、別の場所の控えの2か所以上に置きます。

資料がない場合の進め方

資料がほとんど残っていない場合は、聞き取りで補います。社史の中でも、判断の理由や当時の場面は、もともと書類には残りにくく、聞き取りでしか集められない部分です。資料がないことは、社史をつくれない理由にはなりません。

  1. 確かな点を先に押さえる:登記の記録で、設立の年月日、本店の移転、役員の交代など、公的な記録で確かめられる点を先に押さえ、年表の骨組みにします。
  2. 話を聞く人を広げる:経営者だけでなく、OB・OG、創業者の家族、長く付き合いのある取引先にも話を聞きます。同じ出来事を複数の人から聞くと、年や内容を照らし合わせられます。
  3. 聞き取りの場で資料を探す:「当時の写真や書類は残っていませんか」と、取材のたびに尋ねます。話を聞いたあとで、手元の資料が見つかることがあります。
  4. 外の資料で裏付ける:図書館の新聞・雑誌の記事や、業界の歩みをまとめた本で、時代の背景や業界の出来事を確かめます。
  5. 記憶に基づくことを示す:確かめられない年は「〇年ごろ」と幅を持たせ、語り手の記憶に基づくことが分かる書き方にします。

聞き取りの進め方と質問の例は、取材の進め方と質問例にまとめています。資料集めと取材を含めた全体の流れは、社史の作り方の流れと期間で確認できます。

さらに詳しく知りたい方へ

資料集めと聞き取りを、抜けなく進めるための道具を、KATARUの無料資料にまとめています。

集め方
無料資料「代替わりの前に残す、記録のチェックリスト」は、先代に聞く20の質問、資料集めと聞き取りの段取りのチェック項目、年表・人物・判断の記録の書式を収めた資料です。
本づくり
無料資料「社史担当者のための出版大全」は、最初に決める12のこと、スケジュールの書式、判型・製本・台割の基本をまとめた資料です。

用語の意味は、社史づくりの用語集にもまとめています。

よくある質問

社史の資料集めは、何から始めればよいですか
設立の年月日が分かる登記簿か定款、規模の変化が分かる決算書、時代の様子が分かる写真の3つから始めます。そのうえで、社内報、議事録、製品カタログ、新聞記事などへ広げていきます。
社史の資料は、どこを探せばよいですか
社内の倉庫や書庫、OB・OGや創業者の家族、取引先、図書館、国立国会図書館のデジタルコレクション、法務局を、社内から外へ順に当たります。社内では、古い書類の置き場所を長く勤めている社員に聞くのが近道です。
会社の古い登記の記録は、どこで取れますか
法務局で、登記事項証明書や閉鎖事項証明書、コンピュータ化以前の閉鎖登記簿の謄抄本を請求できます。古い記録がどこまで残っているかは、事前に法務局にお問い合わせください。
集めた資料は、どのように整理すればよいですか
資料台帳を作り、1点ずつ番号、年、種類、内容、出典、保管場所、公開区分、使ったページを記録します。スキャンしたデータのファイル名にも同じ番号を入れると、台帳とデータを結び付けられます。
資料をスキャンするときの解像度は、どのくらいがよいですか
国立国会図書館の研修教材では、白黒の文字・線画の場合、10ポイント以上の文字で150dpi、4ポイント以上の文字や主に線画で400dpiなどの目安が示され、近年の国立国会図書館では400dpiが基本とされています。写真は、高めの解像度とカラーで読み取っておくと、あとで使い道を広げやすくなります。
昔の写真を社史に載せるときは、何を確かめればよいですか
撮影した人、写っている人、社史に使ってよい取り決めかどうかを確かめます。写っている人が特定できる写真を社外向けに載せる場合は、本人や家族の確認を取ります。権利の判断に迷う場合は、弁護士などの専門家にご確認ください。
資料がほとんど残っていなくても、社史はつくれますか
つくれます。登記の記録で確かな点を押さえ、経営者、OB・OG、家族、取引先への聞き取りで補います。確かめられない年は「〇年ごろ」と幅を持たせ、語り手の記憶に基づくことが分かるように書きます。

続きは、無料の資料で

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公開日:2026年10月15日 KATARU(運営 ミダスマーケティング)