社史とは
社史とは、会社が自らの歩みを記録し、まとめたものです。創業の経緯、事業の移り変わり、節目の出来事、そのときどきの判断の理由、経営者や社員の言葉などを収めます。国立国会図書館のリサーチ・ナビ「社史について調べる」でも、社史を「企業が自身の歴史についてまとめたもの」として扱っています。
社史は、書店で売るための本ではなく、社員、OB・OG、取引先など、会社に関わる人に配るために作られることが多い出版物です。形は冊子が一般的ですが、PDF、ウェブ、動画、データで作るものもあります。
- 作る人
- 会社(発行者)。社内の担当者が中心になり、取材や編集、デザイン、印刷を外部に頼むこともあります。
- 読む人
- 社員、OB・OG、取引先、株主、次の世代の経営者、入社を考えている人など。
- 主な中身
- トップの言葉、会社の歩み(通史)、転機と判断の理由、事業と製品、人と組織、年表、資料編。
- 作る時期
- 創業や設立の周年、代替わり、移転や合併などの節目に合わせることが多く、節目に関係なく作る会社もあります。
社史に何を載せるかは、社史に何を書くか:構成と載せる要素で詳しく解説しています。
年史・周年誌・記念誌などとの違い
年史、周年誌、記念誌は、社史と重なる部分の大きい言葉です。違いは、主に「作るきっかけ」と「中心になる内容」にあります。年史と周年誌は、周年に合わせて作る社史の呼び名で、記念誌は節目を祝うことに重きを置いた冊子を指すことが多い言葉です。会社によって呼び方は異なり、厳密な線引きがあるわけではありません。
| 呼び名 | 作るきっかけ | 中心になる内容 | 社史との関係 |
|---|---|---|---|
| 社史 | 周年、代替わり、記録の整理など | 会社の歩みの記録と、その理由 | 全体を指す呼び名 |
| 年史(〇〇年史) | 創業や設立からの年数の節目 | その年数までの歩み。「50年史」「100年史」のように題名に年数を入れる | 周年に合わせて作る社史 |
| 周年誌 | 周年 | 歩みの振り返りに加え、式典の記録や挨拶を載せることもある | 年史とほぼ同じ意味で使われる |
| 記念誌 | 周年、竣工、移転、受賞などの節目 | 挨拶、写真、祝辞など、節目を祝う内容が中心になりやすい | 社史より薄く、写真を多く使うものが多い |
| 社内報の特集 | 周年や節目の号 | 歩みの一部を、記事として紹介する | 社史の素材や、社史の告知になる |
| 会社案内 | 営業や採用 | いまの事業、数字、拠点。歴史は沿革として短く載せる | いまを伝えるもの。社史は歩みと理由を伝えるもの |
| 自分史・創業者の本 | 創業者や経営者の個人の節目 | 一人の人生と考え方。会社の話は、その一部として出てくる | 主語が個人。社史は主語が会社 |
どの呼び名を選ぶかより、「誰に、何を伝えるか」を先に決めることが大切です。たとえば、周年の式典で配る写真中心の冊子は「記念誌」と呼ばれることが多く、構成としては写真年表型にあたります。言葉の意味は社史づくりの用語集にもまとめています。
社史を作る主な目的
社史を作る目的は、周年の記念だけではありません。事業承継、社員教育、採用、取引先への説明、記録の保存、社内のAIへの情報の受け渡しなど、使い道によって、読む人と載せる内容が変わります。
| 目的 | 主に読む人 | 残したいこと | 向いている形 |
|---|---|---|---|
| 周年の記念 | 社員、OB・OG、取引先 | これまでの歩みと、お世話になった人への感謝 | 冊子(写真年表型から通史型まで) |
| 事業承継 | 次の世代の経営者、幹部 | 何を受け継ぎ、何を変えてよいのか。判断の理由 | 通史型の冊子と、判断の記録 |
| 社員教育 | 入社して間もない社員 | なぜこの事業をしているのか。大事にしてきた考え方 | 小さめの冊子、PDF |
| 採用 | 入社を考えている人 | どんな人が、どんな思いで働いているのか | ウェブ、動画、声型の冊子 |
| 取引先への説明 | お客様、取引先、金融機関 | 信頼できる会社か。何を積み重ねてきたか | 写真年表型の冊子、ウェブ |
| 記録の保存 | 将来の社員、研究者 | 年、人、出来事の正確な記録 | 冊子と、資料編・データ |
| 社内のAIへの受け渡し | AIと、それを使う社員 | 事実と、その理由。社内の用語 | 年表・用語集・判断の記録をまとめたデータ |
目的が2つ以上ある場合は、いちばん読んでほしい人を1人決め、その人に合わせて構成を選びます。目的と構成の関係は社史の5つの型で、代替わりに向けた記録の残し方は代替わりの前に、先代から聞いておくことで解説しています。
AIに読ませる資料としての社史
社内で生成AIを使う会社では、社史が、AIに自社のことを答えさせるための資料にもなります。一般のAIは、社内の出来事や用語、判断の理由を知らないためです。この使い道では、年と主語を省略しない文で書くこと、用語や人の呼び方を全体でそろえることが求められます。詳しくは社内のAIに、自社のことを教える方法をご覧ください。
社史の主な形
社史の形は、本(冊子)、PDF、ウェブ、動画、データの5つに分けられます。1つに絞る必要はなく、同じ原稿から冊子とPDFを作る、冊子に動画を添えるといった組み合わせもよく使われます。
| 形 | 向いていること | 気をつけること |
|---|---|---|
| 本(冊子) | 式典での配布、手元に残す記念、長く保存すること | 配った後に直せない。部数と保管場所を先に決める |
| 社内での共有、遠方の拠点やOB・OGへの配布、印刷の手間を省くこと | 社外に公開する場合は、載せる人の同意と公開範囲を確かめる | |
| ウェブ | 採用や取引先への紹介、検索で見つけてもらうこと、内容の更新 | 社員の名前や顔写真を載せる範囲を決める。公開を止めると読めなくなる |
| 動画 | 経営者の語り口や、工場・店の様子を伝えること | 出演する人の同意を取る。年や数字の細かな記録には向かない |
| データ | 社内のAIに渡すこと、年表や人物の記録を検索できるようにすること | 書式をそろえ、更新する人と時期を決める |
ウェブや動画で社員の名前、顔写真、声を出す場合は、本人の同意を取り、退職した人や亡くなった人の扱いも事前に決めておきます。写真や文章の権利、個人情報の扱いで判断に迷う場合は、弁護士などの専門家にご相談ください。出版の方法による違いは、企業出版・自費出版・商業出版・社史の違いと費用で解説しています。
社史が残る場所
社史は、会社の中だけでなく、図書館などの公的な場所にも残ります。社外の人が会社の歴史を調べるとき、そうした場所に収められた社史が手がかりになります。
国立国会図書館への納本
国内で発行された出版物は、国立国会図書館法にもとづき、国立国会図書館に納めることになっています。国立国会図書館の納本Q&Aによると、社史・団体史や自費出版の本も、配ることを目的に相当の部数(通常100部以上)を作っていれば納本の対象で、ISBNがない出版物も対象になります。納め方の詳細は、出版の違いと費用のページにまとめています。
PDFなどで公開する社史も、対象になる場合があります。国立国会図書館のオンライン資料収集制度(eデポ)の案内によると、民間がインターネットで公開する電子書籍や電子雑誌のうち、PDFやEPUBの形式で作られたものなどが収集の対象です。会社のウェブサイトそのものは、国立国会図書館のインターネット資料の収集の案内によると、国の機関や自治体など以外のサイトは、公益法人や私立大学などを主な対象に、発信者の許諾を得られたものだけを収集する扱いで、会社のサイトが収集されるとは限りません。ウェブだけで公開した社史は、サイトを閉じると読めなくなることがあるため、冊子やPDFでも残しておくと安心です。
社史を集めている図書館と団体
国立国会図書館のリサーチ・ナビ「社史について調べる」では、社史を多く所蔵する機関として、次のような例が紹介されています。
| 機関 | 紹介されている内容 |
|---|---|
| 神奈川県立川崎図書館 | 会社史・経済団体史・労働組合史の特別コレクションを約22,000冊所蔵 |
| 大阪府立中之島図書館 | 社史コーナーに配架している社史約5,200点の業種別目録を公開 |
| 渋沢栄一記念財団「渋沢社史データベース」 | 明治以降に日本で出版された社史のうち、約1,600冊分のデータを収録 |
このほか、企業の史料の保存や社史の編纂に携わる人と機関の集まりとして、企業史料協議会があります。国立公文書館の機関誌『アーカイブズ』(2010年)に掲載された紹介によると、同協議会は1981年に創立され、企業史料の保存・管理の研究、会社史の編纂の研究、企業の記録を扱う人の育成などに取り組んでいます。冊数や所蔵の情報は変わることがあるため、利用する際は各機関の案内でお確かめください。
社内に残す
社史を作る過程で集めた写真、資料、取材の記録は、本に載らなかったものも含めて、会社の財産になります。保管する場所と担当を決め、次に社史を作る人が使えるようにしておくと、次の周年や代替わりのときの資料集めが短くなります。
作り始める前に決めること
社史を作ると決めたら、最初に目的、読む人、形、配る日の4つを決めます。この4つが決まると、構成の型、ページ数、取材の相手、部数が順に決まっていきます。
- 目的:周年の記念、事業承継、社員教育、採用など、何に使うかを決めます。
- 読む人:いちばん読んでほしい人を1人決めます。
- 形:冊子、PDF、ウェブ、動画、データのどれを主役にするかを決めます。
- 配る日:式典や入社式など、配る場面から発行日を決め、そこから逆算して計画を立てます。
工程ごとの進め方と期間の目安は社史の作り方:流れと期間の目安で、費用の考え方は社史の費用:目安・内訳・見積もりと抑え方で解説しています。周年に合わせて作る場合は、周年記念にやることもあわせてご覧ください。
無料資料のご案内
社史づくりを任されたときに、最初に社内で共有できる資料を、無料で公開しています。
- 無料資料「社史担当者のための出版大全」:最初に決める12のこと、発行日から逆算するスケジュールの書式、工程ごとの費用の内訳、判型・製本・台割の基本、校正の言葉を収めています。
- 無料資料「代替わりの前に残す、記録のチェックリスト」:先代に聞く20の質問、聞き取りの段取り、年表・人物・判断の記録の書式を収めています。
よくある質問
- 社史とは、何ですか
- 会社が自らの歩みを記録し、まとめたものです。創業の経緯、事業の移り変わり、節目の出来事、判断の理由、経営者や社員の言葉などを収めます。冊子が一般的ですが、PDF、ウェブ、動画、データで作るものもあります。
- 社史と記念誌は、どう違いますか
- 社史は会社の歩みの記録と、その理由を伝えることが中心です。記念誌は、周年や竣工などの節目を祝うことに重きを置き、挨拶や写真を中心にまとめるものが多くあります。呼び方は会社によって異なり、厳密な線引きはありません。
- 年史と周年誌は、どう違いますか
- どちらも周年に合わせて作る社史を指し、ほぼ同じ意味で使われます。「50年史」「100年史」のように、年数を題名に入れたものを年史と呼ぶことが多くあります。
- 周年でなくても、社史を作ってよいですか
- 作れます。代替わり、移転や合併、社員教育や採用のための資料づくりなど、周年以外の節目や目的で社史を作る会社もあります。
- 社史は、国立国会図書館に納める必要がありますか
- 国立国会図書館の案内によると、配ることを目的に相当の部数(通常100部以上)を作った社史は、ISBNがなくても納本の対象です。PDFなどで公開する社史も、オンライン資料の収集制度の対象になる場合があります。詳しくは国立国会図書館の案内でお確かめください。
- 小さな会社でも、社史を作る意味はありますか
- あります。会社の規模にかかわらず、創業の経緯や判断の理由は、語れる人がいるうちに聞いておかないと残りません。8〜16ページ程度の薄い冊子やPDFから始める方法もあります。
- 社史に社員の名前や写真を載せるときは、何に気をつければよいですか
- 本人の同意を取ってから載せます。ウェブで公開する場合は、冊子よりも広く読まれるため、載せる範囲をより慎重に決めます。権利や個人情報の扱いで判断に迷う場合は、弁護士などの専門家にご相談ください。
続きは、無料の資料で
最初に決める12のこと、スケジュールの書式、工程ごとの費用の内訳は、無料資料「社史担当者のための出版大全」にまとめています。会社名、お名前、メールアドレスをご入力いただくと、PDFをすぐにお送りします。
資料を受け取る(無料)社史の5つの型 | 社史づくりの用語集 | 社史に何を書くか:構成と載せる要素 | KATARUのスマート社史について
公開日:2026年10月15日 KATARU(運営 ミダスマーケティング)